2011/02/09

「水」を「見ず」して「瑞」は得られず ― 『中国最大の弱点、それは水だ!』

「見ず」にはいられない(無視できない)存在 ― これが「水」の語源だ、というのは私が作った真っ赤な嘘。

が、少なくとも本書を読み終えれば「あながち嘘でもないかも」と感じるのではないかと思う。



中国最大の弱点、それは水だ!  角川SSC新書  水ビジネスに賭ける日本の戦略 (角川SSC新書)中国最大の弱点、それは水だ! 角川SSC新書 水ビジネスに賭ける日本の戦略 (角川SSC新書)
(2011/01/08)
浜田 和幸

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第1章 深刻化する中国の水不足
第2章 世界を襲うウォーター・クライシス
第3章 脱・ペットボトル水
第4章 ウォーター・マネー
第5章 世界に誇れる日本の水道技術
第6章 問われる日本の水戦略



水という「見ずにはいられない存在」を追いかけ、その度に血という「見ずに済むはずの存在」を嫌というほど見てきた生命体が、かつて人間の他にいただろうか?

香港大学の地理学者デービッド・チャン氏によると、過去500年の間、8000回以上もの戦争が起きたが、その原因の大半が水不足による水源地の奪い合いによるものだそうだ。

そしてローマの歴史家クルティウス・ルーフスの言葉も借りるならば「歴史は繰り返す」のである。

否、もうすでにそれは始まっていたりするのだから、この格言のいかに的確なことか。舌を巻かざるをえない。

「水の恩は送られぬ」 ― 水の恩恵というのは報いることができないほど大きいものだという意味だが、この本を読めばそのことをより一層自覚するはずだ。「水魚の交わり」なんていう諺もあるが、もっと言って「水人の交わり」でもいいくらい。


前置きはこのくらいにしておこう。


本書は、今現在世界における「水事情」についてまとめた本である。特に第2章「世界を襲うウォーター・クライシス」、第3章「脱・ペットボトル水」は日本人必見。なんせ、イザヤ・ベンダサンに言わせれば、安全と水はタダで手に入ると思っているような民族だ。日本人として生まれたことがいかに幸福なことか、思い知らされること間違いない。

とはいっても本書は小うるさいお説教本の類などではない。水を使ってのビジネス、いわゆる「水ビジネス」の可能性についてもきちんと指摘している。

日本はすでに水を使ってビジネスができるだけの優れたノウハウを持っている。水道水の水質管理、水道インフラの出来は世界屈指。「コイツをビジネスに生かさない手はない!」というわけだ。

今持っている技術はパクられてもいい。モノではないから。でも持ち腐れだけはいただけない。ましてや後生大事に神棚へ置いておくなどご法度もいいところ。使ってナンボの代物は使ってこそ価値がある。

“To be, or not to be, that is the question”

シェイクスピアの代表作『ハムレット』の主人公ハムレットの名ゼリフだが、今まさに日本は「色んな意味で」彼と同じ状況にある。私が親友のレアティーズならば、きちんとこう言うだろう ― “NOT TO BE”と。

20世紀が石油の時代ならば、21世紀は水の時代 ― 各国の大企業や投資家たちは血眼になりながら、水源地の争奪戦を繰り広げている。地球上に存在し、且つ人類にとって有効な水は全体の0.01%分だけ。決して日本も出遅れてはならない。
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