2011/02/13

「分学部」化する文学部 ― 『文学部がなくなる日』

他学部生「文学部って何してんの?」
文学部生「・・・いろいろ」


おそらく上のような質問をされた文学部生の大半は、上のように答えるのではないか。
なんだかよく分からないけど、いろいろやる学部。それが文学部。


「文学部がなくなる」ことはあるかもしれない。ただ、それは文学部でやる内容がなくなるという意味ではない。


ではどういう意味か? ― 「分学部」になるのである。


で、「分学部」になることが、学力低下の一因というアダになっていることに、当の大学は気づいていない。



文学部がなくなる日―誰も書かなかった大学の「いま」 (主婦の友新書)文学部がなくなる日―誰も書かなかった大学の「いま」 (主婦の友新書)
(2011/02/05)
倉部 史記

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第1章 大学がつぶれる
第2章 変わっていく文学部
第3章 一変した大学の風景
第4章 生き残りをかけた大学の戦い
第5章 入試と今後の大学のあり方
第6章 「大学選び」を変える



本書は大学の「今」についての最新レポートだ。大学生の学力低下が止まらない現下、大学の経営政策と著者の提言が記されている。







「昔は通用したのに、今は通用しない」というのはよくあることだ。


流行語なんかまさにその典型。その昔、「チョベリグ」「チョベリバ」なんて言葉が流行ったが、さすがに今この言葉を使う人は絶滅したに違いない。


「ハンサム」という言葉も「イケメン」に置き換わり、広辞苑にまで採用されるに至った。そのうち「ハンサム」を使う人間も絶滅するかもしれない。


そして、本書のタイトルの一部でもある「文学部」という言葉も、(今の高校生の間では)通用しづらくなってきている。


誤解を招かないように言うと、文学部という「言葉そのもの」が通用しないのではない。言葉自体は知っているが、「意味」が分からなくなってきているのだ。新設大学が「文学部」という名称を採用しなくなってきているのも、このことを如実に表している。


思うに、「文学」というと文芸作品、特に小説や詩を思い浮かべる人が多い。それはそれで合っているが、かなり狭い意味での使われ方だ。


手持ちの辞書を引いてもらうと分かるが、「文学」という言葉は「自然科学・社会科学以外の学問。文芸学・哲学・史学・言語学など」も意味する。(大辞泉より)これだけの学問を意味するのに、たった一語で「文学」と括られてしまえば、そりゃあ何をやるのかイメージしづらい。


しかし、それは高校生自身の問題であって、「文学」という言葉が悪いワケではない。高校生には決して理解出来ない言葉でもない。彼らがこの言葉の意味、そして「文学部」が何をしている学部なのかを調べれば済む話である。


ところが、大学はせっせと文学部を「分学部」に変えている。新たに学部を作り分け、それまで文学部として扱ってきた内容をそこで勉強させようというのである。「学部ける」で分学部、「かりやすい学部」で分学部、といった具合に。



それで、その問題の「分学部」化はどうなのか?



色々な意見があるだろうが、個人的には「は~い!今の最新流行に合わせて新しい学部、作っちゃいました☆(笑)」とでも言わんばかりの学部が増えたのではないかと感じている。安易に「国際」だの「メディア」だの「キャリア」だの「環境」だの「人間◯◯」だのといった言葉を取り入れたせいか、安っぽく釣りっぽいネーミングのものが多かったりする。


そしてそういった学部名が「分りやすい」のかと言えば、それもそれで疑わしい。


「流行のキーワードや造語を組み合わせるあまり、何を学ぶのかよくわからない名称になっているケースも少なくありません。むしろ、あえて「何を学ぶのかよくわからない」名称にしているのではないかとさえ思える例もあります」(p48)


こういった学部の仕分け作業、学部名という看板の掛替え作業は、優秀な学生を集めるというのが本来の目的ではなく、ただ単に学生の数を稼ぐこと、すなわち大学の収入源を増やすことに腐心している場合が多い。


伝統の名称だけに拘れとは言わないが、有名大学までもこぞってこんなことを始めたものだから、いかがなものかと思えてならない。「学力低下」や「大学全入時代」と呼ばれようになった現在、こういったことに拍車をかけているのはむしろ大学側ではないかとさえ疑いたくなる。


話は変わるが、今の日本には700校以上もの大学があるらしい。はっきり言って多すぎである。もはや小中学生の通う学習塾感覚だ。いや、「学習塾」であるならまだマシかもしれない。(「塾」の字がつく大学もあるくらいだし。あえてどことは言わないけど。)大半は勉強しているのかさえも怪しい。


そしてその大半が無名大学であり、金があって自分の名前さえ書けば受かるような大学も存在したりする。まぁ、これだけあればそういったのが出てきてもおかしくない。(その時点で最早、大学ではないと思うが。)



さて、大学の批判ばかりしていてもしょうがない。そこで今後、大学進学を真剣に考えている高校生たちに、なるべく学部名にダマされず、入学後のミスマッチが起きないよう、考えてみたことを3つほど書いてみる。



1、新書でいいから、色々なジャンルの本を読んでみる。文学作品、歴史、法律、経済、物理、化学、生物、数学、ありとあらゆる学問に関係した本を読んでみる。そして少しでも興味の幅を広げてみる。これを実践してみるだけでも、自分は大学で何を学びたいのかがはっきりしてくると思う。


2、大学関係の雑誌や大学のパンフレットを読んでみる。


3、実際に大学の授業に潜り込む。オープンキャンパスに参加するのもいいが、入学後の授業内容との落差が激しいものが多いので、あまり期待はしないほうがいい。



3は難しいかもしれないが、1と2ならできる。大学受験は決して大学受験勉強でもって全て決まるものではないし、入学後にミスマッチが起きるのであれば、受験がうまくいったとも言えないだろう。


以上のことを踏まえた上で、今の高校生がすべきことは色んな意味で「賢い高校生」になること。そして「賢い学部選び」をすること。これに尽きる。


そして高校生にウケないからといって、安易にウケけるような名前の学部をつくり、高校生を釣り、金を釣るという卑しい活動はやめましょうね、と。(当然ながら釣られる高校生にも罪はある。)
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