2011/07/02

急に「断捨離」なんて言われても困るのよ ― 『生物学的文明論』


生物学的文明論 (新潮新書)生物学的文明論 (新潮新書)
(2011/06)
本川 達雄

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ひと昔前に『ゾウの時間 ネズミの時間』という本がブームになりました。僕も以前買って読んでみたんですが、学術的な記述が多く、理解するのが大変だったのでほとんど読まずに古本屋に売ってしまったんですよね。

で、本書はというとすごく読みやすくなっています。既作のものと違ってエッセイ調です。優しいおじいちゃんが孫に生物学の面白さを語るような感じで書かれています。



著者の本川さんによると、時間というのは相対的なものらしいです。その人その人によって、感じる「時間の早さ」というものがある。あることに自分のエネルギーを注ぎ込めば注ぎこむほど、時間を早くすすめることができるらしい。例えば、自分の好きなことに没頭している時や忙しい時(つまりそこにエネルギーをたくさん使っている時)、時間の進みは早く感じられます。一方、退屈なことをしている時は、時間の進みが遅く感じられます。

今の時代、会社という組織は自分たちの利益を上げるために、必死になって仕事にエネルギーを注ぎます。他社は何をしているのかという情報を集まるためにエネルギーを使う。今日中に仕事を終わらせるためにエネルギーを使う。24時間体制にしてエネルギーを使う。要するに、たくさんのことに自分たちの力を注ぎ込むわけです。

そうするとどうなるか。時間が早く進みすぎて追いつけず、みんな次第に疲れてくる。疲れたぶん利益が上がったり、新しい契約が取れたり、業績が良くなったりすれば万々歳ですが、そうはなりにくい時代です。かといって、やめれば時代に取り残されるという思いもある。だからもっともっと社員を働かせて……と悪循環に陥るのだ、と。

なるほどなぁと思いました。最近は書店で「断捨離」系の本をよく見かけますが、政府からの節電奨励もあって、そういう流れが出てきたのかもしれません。しかしながら、こういうところに僕は日本のいい加減さが見て取れるんじゃないかなあと感じます。今までずっと〇〇を肯定していたのに、それが(ちょっとでも)うまくいかなくなるとすぐに〇〇はダメだ、これからは□□の時代だと主張する。どうしたら◯◯はダメにならないかという「立て直し」は考えず、新たに「作り直し」をしようとしているように見えるんですよね。



話が逸れました。

さて、エネルギーの使用量が多すぎると、それを維持するのが大変になるというのはよくあることです。たくさん働いてたくさん稼ぎ、周りの人よりもいい生活をしている人は、それを維持していかないと、なんだか不幸になった気分になるorなりやすいと思うのですが、どうでしょうか。

こういう人たちに向かって、急に「じゃあこれからは断捨離だ」とか「なるべく働かないようにしよう」と言っても無理な注文です。今までのいい生活に慣れきっているんだから。

ということで結論なんですが、今までエネルギーをたくさん仕事に注ぎこんできた人たちは、今まで通り頑張った方がいいです。一方、これから社会人になる人や、以前からエネルギーをたくさん仕事に注ぎこんできていない人たちは、無理に頑張らない方が良さそうです。年収の多さや社会的名誉は、おまけ程度に考えた方が無難かもしれません。

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