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2011/02/02

医療が「ビジネス」になりにくい理由 ― 『「病院」がトヨタを超える日』

「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)「病院」がトヨタを超える日 医療は日本を救う輸出産業になる! (講談社プラスアルファ新書)
(2011/01/21)
北原 茂実

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医療による経済効果がどれほど大きいかに着目した本だ。「病院の株式会社化」「病院の輸出産業化」という発想は非常に興味深い。現にタイや韓国、インドが外国人富裕層を相手に質の高い医療を「輸出」しているという。「医療崩壊」が声高に叫ばれている今、ひとつの打開策としては考慮すべきかもしれない。

ただ一方で、二つほど疑問がある。

一般的に、医療が純粋な「ビジネス」としての扱いを受けることは(特に日本において)少ないと思う。なぜだろうか?

それは、医者という職業が患者からの「感謝の気持ち」で成り立っている部分が大きいからではないか。もちろん診察料や手術料をもらわないと食っていけないが、大半の人は利益目当てで働いてはいない。それよりも「人を助けたい」という気持ちで働いている人の方が多い。

医師は患者を助けることにやりがいを感じ、患者は助けてもらったことに感謝の気持ちを示す。それが医師にとっての最大のモチベーションではないか。お金による報酬というのはあくまでも副産物のような存在だ。こういった背景があるため医療が純粋に利益目当ての「ビジネス」としては見られないし、成立しにくい。

仮に純粋なビジネスとして始まれば、医者と患者は「お店」と「お客さん」という関係になるが、「お客さん」が「お店」に対して感謝の気持ちを表すことはまずない。そして病院側は病院に来た人を「お客様」ならぬ「患者様」として扱うことになる。

「感謝の気持ち」で成り立っている部分が大きい職業から、「感謝の気持ち」がなくなればどうなるだろうか?

患者からの理不尽なクレームが来ても、医師たちは黙って頭をさげる。「ありがとうございました」という言葉は患者からではなく、医師から ― そんな光景を目にするようになるのではないか。

以前からこの「患者様」という呼称やそういった扱いに疑問の声が上がっている。そして「商業としての医療」が始まればこの問題はもっと深刻になるだろう。事実、韓国ではその手のトラブルが医者と患者との間で起きているのだそうだ。

こういった問題だけならまだしも、会社として病院を経営していく以上、他の病院は競争相手ということになる。利益が上がらなければ倒産ということになるが、これはその病院だけの話に留まらない。そこを掛かり付けとしている人たちにも影響が出てくるからだ。

今はこの二つの問題をどのように対処するのかについて考えてからでないと、「医療の産業化」を成功させるのは難しい。



2012.1.7追記:本書を読んで考えるきっかけになった本をご紹介↓


偽善の医療 (新潮新書)偽善の医療 (新潮新書)
(2009/03)
里見 清一

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